日本株自動売買システムのPhase Alpha v2.1.0で、リスクリワード比(RR比)を1.485から4.559に改善した。RR比4.559とは「1万円のリスクに対して4.56万円のリターンが期待できる」ということであり、勝率40%でも十分に利益が出る水準だ。
この改善はB3〜B7の5段階の施策を1,823テスト全PASSで段階的にGO判定しながら達成した。本記事では、各フェーズで何を変え、何がRR比改善に寄与したかを記録する。
RR比(リスクリワード比)とは
RR比(Risk-Reward Ratio)は、1トレードあたりの「平均利益 ÷ 平均損失」で計算される。
平均利益: +20,000円
平均損失: -5,000円
RR比 = 20,000 / 5,000 = 4.0
RR比が高いほど、「1回の勝ちで複数回の負けを取り返せる」。勝率との関係は:
| RR比 | 必要な最低勝率(損益分岐点) |
|---|---|
| 1.0 | 50%(勝ちと負けが同額) |
| 1.5 | 40% |
| 2.0 | 33% |
| 3.0 | 25% |
| 4.0 | 20% |
| 4.559 | 18% |
RR比4.559なら、勝率18%でも損益分岐点に達する。実際の勝率が40%あれば、非常に大きな期待値プラスだ。
5段階の最適化プロセス
B3: Pass Rate最適化
目的: エントリーシグナルの「品質フィルター」を強化する。
Pass Rate(通過率)は、全シグナルに対する「実際にエントリーに至ったシグナル」の比率だ。
Before: Pass Rate = 45%(シグナルの45%がエントリーに至る)
After: Pass Rate = 25%(より厳選されたシグナルのみ通過)
シグナルの品質基準を厳しくすることで、「弱いシグナルでの不必要なエントリー」を減らした。トレード数は減るが、1トレードあたりの勝率が改善する。
B4: SL(ストップロス)の最適化
目的: 損切り幅を最適化して、平均損失を縮小する。
Before: SL = 2.0 × ATR → 平均損失 -12,000円
After: SL = 1.0 × ATR → 平均損失 -5,500円
SLを1.0×ATR(株価の平均的な値動き幅の1倍)に縮小した。狭すぎるSLは「ノイズで刈られる」リスクがあるが、バックテストのグリッドサーチで1.0×ATRが最適と確認した。
RR比への寄与: 分母(平均損失)が半分近く減ったため、RR比が大きく改善。
B5: TP(テイクプロフィット)の最適化
目的: 利益確定幅を最適化して、平均利益を最大化する。
Before: TP = 3.0 × ATR → 平均利益 +18,000円
After: TP = 5.0 × ATR → 平均利益 +25,000円
TPを広げると勝率は下がるが、「勝ったときの利益」が大きくなる。SLを縮小した分だけTPを広げる余裕が生まれた。
B6: パラメータ総合最適化
B3〜B5の個別最適化結果を統合し、パラメータセット全体の最適化を実施。
最終パラメータ:
min_score = 2.5 (エントリー閾値を引き上げ)
SL = 1.0 × ATR (損切り幅を縮小)
TP = 5.0 × ATR (利確幅を拡大)
→ RR比 = 4.559
B7: 本番適用
B6パラメータをPhase T8の27銘柄に対して本番(Practice Mode)に適用した。1,823テストが全PASSすることを確認し、GO判定を行った。
Phase T7.4: マイナスKelly銘柄の改善
Phase Alphaと並行して、Kelly基準(ケリー基準)でマイナス値を示す銘柄の改善も実施した。
Kelly基準のおさらい
Kelly% = (勝率 × RR比 - 敗率) / RR比
Kelly%がマイナスになるのは「この戦略で取引するほど資産が減る」ことを意味する。つまりエッジ(優位性)がない。
11銘柄のGO判定
バックテストでKelly%がマイナスだった銘柄に対して、B3〜B6と同じ最適化プロセスを適用した結果、27銘柄中11銘柄がKelly%をプラスに転換し、GO判定となった。
Before: 27銘柄中 16銘柄がKelly+ / 11銘柄がKelly-
After: 27銘柄中 27銘柄がKelly+ / 0銘柄がKelly-
残りの11銘柄も「パラメータ調整でKelly+に転換可能」だったことが、SL/TPの最適化の効果を示している。
工数: 計画7日のところ1日で完了(700%の短縮)。パラメータ最適化のスクリプトが整備されていたため、グリッドサーチを回して結果を確認するだけで済んだ。
時間帯別スコア重み(JS-ADD-A3)
Phase Alphaと関連して、「取引時間帯によってスコアの重みを変える」施策も実装済みだ。
日本株は09:00〜15:30のザラ場中に取引されるが、時間帯によってシグナルの信頼性が異なる。
09:00〜09:30(寄り付き): ボラティリティ高い → シグナルの信頼性低い
09:30〜11:30(前場): 比較的安定 → 標準的な重み
12:30〜14:00(後場前半): やや低調 → 重みを下げる
14:00〜15:00(後場後半): 大引けに向けた動き → 重みを上げる
この重み付けにより、「寄り付きの乱高下でダマシシグナルに引っかかる」リスクを軽減した。
学んだこと
1. RR比の改善は「SL縮小」の影響が最も大きい
RR比 = 平均利益 / 平均損失。分母を半分にすればRR比は2倍になる。SLの最適化はTP最適化より先に行うべきだ。
2. 段階的なGO判定が安全
B3→B4→B5→B6→B7と1段階ずつGO判定することで、「どの変更がどの効果をもたらしたか」を分離できる。一括で変更すると、改悪が改善に紛れて気づけない。
3. 最適化スクリプトの整備が工数を700%短縮する
Phase T7.4が1日で完了したのは、グリッドサーチスクリプトが既に整備されていたからだ。「最適化を手作業で行う」フェーズから「スクリプトを回して結果を読む」フェーズに移行できたことが大きい。
まとめ
Phase Alpha v2.1.0の最適化で重要なのは以下の3点だ。
- SLの縮小が最大の効果: SL 2.0→1.0×ATRで平均損失を半減。RR比改善の主要因
- 段階的GO判定: B3〜B7の5段階で1つずつ検証。効果の分離と安全性を確保
- 全銘柄Kelly+への転換: パラメータ最適化により11銘柄がKelly-からKelly+に転換。27銘柄全銘柄が期待値プラス
RR比1.5→4.559の改善は、「何か1つの魔法的な指標を追加した」のではなく、SL/TP/閾値の地道なグリッドサーチの結果だ。