日本株でシステムトレードを組むとき、最初にぶつかるのが「株価データをどこから取るか」という問題です。
無料と言いながらリアルタイム性が足りなかったり、REST APIが公開されていても日本株だけ対応が薄かったりと、選定には意外と落とし穴があります。
この記事では、個人開発者の立場から、日本株のリアルタイム株価が取れる主要APIを料金・鮮度・用途で比較し、目的別の選び方を整理します。
Table of contents
Open Table of contents
比較サマリー
先に結論からまとめます。
| サービス | 日本株対応 | リアルタイム | 無料枠 | 月額(参考) | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|---|
| J-Quants API | ◎(JPX公式) | △(有料プランで当日足/リアルタイムは別途) | ◯(12週遅れ日足・2年) | Light 1,650円/Standard 3,300円/Premium 16,500円 | バックテスト・日次運用 |
| Alpha Vantage | △(ADR・主要銘柄のみ) | ◯(有料プランで1分足) | ◯(25リクエスト/日) | 49.99ドル〜 | 海外株含めた分析の副次用途 |
| yfinance(Yahoo Finance非公式) | ◯(ティッカーに.T付与) | △(15〜20分遅延) | ◎(完全無料) | 無料 | 個人のバックテスト・プロトタイプ |
| kabuステーションAPI | ◎ | ◎(PUSH API対応) | ◯(口座開設+ソフト常時起動) | 無料(※kabuステ自体は条件付き無料) | デイトレ・スキャルピング自動化 |
| 立花証券e支店API | ◎ | ◯ | × | 口座開設必須 | 実弾の自動売買 |
| JPXマーケットデータAPI | ◎ | ◎ | × | 法人向け(要問合せ) | 商用・機関投資家向け |
「無料+リアルタイムに近い」という条件で妥協点を探すなら、kabuステーションAPIが最もバランスが良いというのが現時点の結論です。
1. J-Quants API
👉 公式サイト
サービス概要
JPX(日本取引所グループ)公式のデータ配信API。株価・財務・指数などを REST API で取得できます。公式が直接提供しているため、データの信頼性は最上位です。
プラン別の主な違い
| プラン | 料金(税込) | 主なデータ鮮度 |
|---|---|---|
| Free | 0円 | 日足:12週間遅延(過去2年) |
| Light | 1,650円/月 | 日足:前営業日まで |
| Standard | 3,300円/月 | 日足:当日引け後/分足:前営業日まで |
| Premium | 16,500円/月 | 分足リアルタイム相当/ザラ場情報 |
※料金・仕様は変更される場合があります。最新情報は公式サイトで確認してください。
向いている用途
- 日次で戻るバックテストや、財務指標を使ったファクター分析
- Premium プランを使えば分足のザラ場データも扱えるため、短期戦略の検証にも展開可能
- ただし「スキャルピング用の板情報」までは含まれないので、超短期はkabuステ系と併用する形が現実的
注意点
- 無料プランは12週遅延なので、リアルタイム目的では使えません
- リアルタイム株価(ティック)を純粋に取得したい場合は、後述の kabuステAPI や立花証券API のほうが適しています
2. Alpha Vantage
👉 公式サイト
サービス概要
米国発の株価データ配信API。米国株が主力ですが、日本株も一部ティッカーでカバーされており、REST API で分足データまで取得できます。
料金と無料枠
- 無料プラン:25リクエスト/日、1分間5リクエストまで
- 有料プラン:月額 49.99 ドル〜(リクエスト上限緩和・リアルタイム対応)
日本株で使う場合の注意
- 主要銘柄のみ対応。中小型株や新興市場はカバーが薄い
- ティッカーが
7203.T(トヨタ)のような Yahoo Finance 互換形式 - リアルタイム分足は有料プラン限定。無料で触れるのは基本的に日足・遅延データ
向いている用途
- 米国株と日本株を同じコードで横断的に扱いたいケース
- JSON 返却で扱いやすく、Python でサッと試すプロトタイピング
- 日本株単体で本格運用するにはカバレッジと料金のバランスが悪いので、副次的な用途に限定するのが無難
3. yfinance(Yahoo Finance 非公式ライブラリ)
👉 GitHub
サービス概要
Yahoo Finance のデータを Python から取得できる非公式ライブラリ。完全無料で、API キーも不要です。
import yfinance as yf
# トヨタの直近5日分の1分足
df = yf.Ticker("7203.T").history(period="5d", interval="1m")
print(df.tail())
特徴
- ティッカーに
.Tを付けるだけで日本株を取得可能(例:7203.T、9984.T) - 分足・日足・週足・月足すべて対応
- リアルタイム性は Yahoo Finance に準じるため、15〜20分遅延が目安
向いている用途
- 個人開発のバックテスト、学習、検証
- 「とりあえず動かしてみる」プロトタイプ
- 本番の自動売買の意思決定に使うには遅延が大きすぎるため、あくまで検証用途と割り切る
注意点
- 非公式ライブラリなので Yahoo 側の仕様変更で突然動かなくなることがあります
- 商用や大規模用途には不向き
4. kabuステーションAPI(auカブコム証券)
👉 公式ドキュメント
サービス概要
auカブコム証券の取引ツール「kabuステーション」と連動する公式 API。株価取得はもちろん、発注・建玉確認などの売買系 API まで揃っています。
特徴
- PUSH API でリアルタイム配信を受け取れる(WebSocket 相当)
- 板情報・歩み値・四本値・建玉などトレード実装に必要な情報がほぼ揃う
- 無料で利用可能。ただし kabuステーションは利用条件(口座残高や取引回数)で利用料が変動
- Windows 環境で kabuステーション本体を常時起動しておく必要があります
注意点
- 早朝(5時台)に自動ログアウトが入るため、ログイン自動化を別途組み込む必要あり
- Mac/Linux ネイティブには対応していないので、実運用では Windows マシン(または VM)を1台用意するケースが多いです
向いている用途
- デイトレード/スキャルピングの自動化
- 板情報を使ったエントリー/エグジット判定
- 「無料でリアルタイム株価を取れて、そのまま発注までできる」数少ない選択肢
5. 立花証券e支店API
👉 公式サイト
サービス概要
立花証券が提供する自動売買向け API。株価取得に加えて売買機能も利用できます。
特徴
- 実弾の自動売買に使える
- 日本株のリアルタイム株価が取れる
- 利用には口座開設が必須
注意点
- 利用条件・料金体系は変更される可能性があるため、導入前に必ず公式で最新情報を確認してください
- 情報量・開発者コミュニティの厚みでは kabuステAPI に分があります
6. JPXマーケットデータ(旧:東証マーケットデータ)
👉 公式サイト
法人・機関投資家向けのフルスペック配信。ティックレベルの板情報・約定データまで取得できますが、個人の用途としては料金・契約のハードルが高めです。
本格的な商用プロダクトを作るのでなければ、ここまでは必要ないことがほとんどです。
目的別の選び方
バックテスト中心・毎日1回で十分
→ J-Quants Light か yfinance
安く済ませたいなら yfinance、データの正確性を担保したいなら J-Quants Light。両方を組み合わせ、yfinance で試作 → J-Quants で本番検証という流れが王道です。
デイトレード/スキャルピング自動化
→ kabuステーションAPI
個人が無料で触れるリアルタイム株価 API としては最有力。PUSH API でティック相当のデータが扱えます。Windows 常時起動が唯一のネック。
分足リアルタイムをコードベースで統一したい
→ J-Quants Premium もしくは kabuステAPI+J-Quants の併用
Premium 単体で完結させるとコードはシンプルになりますが、月額16,500円は個人には重め。kabuステでリアルタイム、J-Quants で過去データというハイブリッドが現実的です。
米国株と日本株を横断して扱いたい
→ yfinance(検証用)+ 本番は証券会社系API
Alpha Vantage は日本株カバレッジが弱いため、横断検証 → 日本側は kabuステ、米国側は Alpaca などと使い分けるのが無難です。
実装時のハマりどころ
1. 「リアルタイム」の定義がサービスごとに違う
- yfinance は 15〜20 分遅延でも「リアルタイム」と書かれる場合があります
- 本当にティック単位で欲しい場合は、PUSH API・WebSocket 対応を明記しているサービスを選んでください
2. 無料枠のリクエスト制限
- Alpha Vantage 無料:25 リクエスト/日
- J-Quants Free:12 週遅延
「ちょっと試す」のが前提の枠なので、本番運用では必ず有料化か別手段に切り替える必要があります。
3. 接続の安定性と早朝の自動ログアウト
kabuステAPI は早朝(5時前後)に強制ログアウトが入ります。日足が確定した直後のジョブが落ちると痛いので、ログイン自動化と監視は最初に組み込んでおくのがおすすめです。
まとめ
| やりたいこと | おすすめ |
|---|---|
| 学習・検証だけ安く始めたい | yfinance |
| 日次でデータの正確性も担保したい | J-Quants Light/Standard |
| リアルタイム+自動発注を無料で組みたい | kabuステーションAPI |
| ザラ場の分足を API だけで完結させたい | J-Quants Premium |
| 米国株も横断したい | yfinance(検証)+証券会社API(本番) |
日本株のリアルタイム株価 API は、「完全無料で商用レベル」という都合のよい選択肢は存在しません。
検証は yfinance、本番は kabuステAPI か J-Quants 有料プラン、という2段構えで組むのが現時点で最も現実的な構成です。
用途が固まってきたら、まずは無料枠で一通り触ってみて、レイテンシ・エラー率・仕様変更の頻度を肌で確かめてから本契約するのを強くおすすめします。