テクニカル指標を1つだけ使ったシグナルは信頼性が低い。RSIが「売られすぎ」を示しても、MACDが「下降トレンド継続」を示していたら、買いシグナルの根拠は弱い。
Confluence(合流)とは、複数の独立したシグナルが同じ方向を指しているかどうかを評価する手法だ。「RSI売られすぎ + MACDゴールデンクロス + 200日移動平均線の上」のように、複数の条件が重なったときだけエントリーする。
本記事では、42パターンのシグナル合流パターンをデータベース化し、各パターンの過去実績(勝率・RR比)に基づいてエントリー判断に活用するConfluenceフィルターの設計を記録する。
Confluenceの基本概念
なぜ複数指標の「合流」が重要か
テクニカル指標には大きく分けて以下のカテゴリがある。
| カテゴリ | 代表的な指標 | 何を測るか |
|---|---|---|
| トレンド | SMA, EMA, MACD | 価格の方向性 |
| モメンタム | RSI, Stochastic | 上昇/下降の勢い |
| ボラティリティ | Bollinger Bands, ATR | 値動きの大きさ |
| ボリューム | OBV, Volume SMA | 出来高の傾向 |
同じカテゴリの指標は相関が高い(似た情報を見ている)ため、「RSI + Stochastic」の合流は情報量の追加が少ない。異なるカテゴリの指標の合流——たとえば「トレンド + モメンタム + ボリューム」——こそが、独立した視点からの裏付けとなる。
Confluenceスコア
各シグナルパターンに対して、過去のバックテスト実績からConfluenceスコアを算出する。
confluence_score = (
pattern_win_rate # このパターンの過去勝率
× pattern_rr_ratio # このパターンの過去RR比
× pattern_frequency # このパターンの発生頻度(稀すぎると統計的に不安定)
)
42パターンのデータベース
パターンの構成
42パターンは、以下のシグナル条件の組み合わせから生成される。
基本シグナル(8種):
1. SMA20 ゴールデンクロス / デッドクロス
2. MACD ゴールデンクロス / デッドクロス
3. RSI 売られすぎ(<30) / 買われすぎ(>70)
4. Stochastic %K/%D クロス
5. Bollinger Band 下端タッチ / 上端タッチ
6. ADX > 25(トレンド確認)
7. 価格 > SMA200(長期トレンド方向確認)
8. OBV上昇トレンド(出来高確認)
2シグナル合流: C(8,2) = 28パターン
3シグナル合流: 選抜14パターン(全168パターンから高勝率のものを選抜)
合計: 42パターン
パターンDBの構造
CONFLUENCE_DB = {
"MACD_CROSS_UP + RSI_OVERSOLD": {
"win_rate": 0.72, # 勝率72%
"avg_rr": 1.8, # 平均RR比
"sample_size": 156, # サンプル数
"confidence": "HIGH", # 信頼度(サンプル100以上)
"categories": ["trend", "momentum"], # 異カテゴリ合流
},
"BB_LOWER + STOCH_CROSS_UP": {
"win_rate": 0.65,
"avg_rr": 1.4,
"sample_size": 89,
"confidence": "MEDIUM", # サンプル50〜100
"categories": ["volatility", "momentum"],
},
# ... 42パターン
}
バックテストでの検証
各パターンの勝率・RR比は、2022年6月〜現在の約3.5年分のH4足データから計算した。サンプル数が50未満のパターンは「LOW confidence」として、エントリー判断に使用しない。
既存システムへの統合
Confluenceフィルターは、既存のUnifiedSignalEvaluatorの「後段フィルター」として動作する。
1. UnifiedSignalEvaluator.should_entry()
→ total_score ≥ min_total_score → エントリー候補
2. ConfluenceFilter.evaluate()
→ 現在のシグナルパターンをDBから検索
→ パターンの信頼度が HIGH or MEDIUM → エントリー許可
→ パターンが見つからない or LOW → エントリー見送り
Confluenceフィルターは「追加フィルター」であり、UnifiedSignalEvaluatorのスコア判定を通過したシグナルに対してのみ適用される。つまり「スコアが高く、かつ合流パターンの実績が良い」場合にのみエントリーする。
有効化の条件
このフィルターは経済指標フィルター(FX-ADD-D2)のDry-Run完了後に有効化する予定だ。複数のフィルターを同時に有効化すると、どのフィルターが効果を発揮しているか分離できなくなるため、段階的に追加する方針を取っている。
学んだこと
1. 「異なるカテゴリ」の合流が価値を持つ
RSI + Stochastic(ともにモメンタム)の合流は、実質的に同じ情報の重複確認にすぎない。トレンド + モメンタム + ボリュームのように、異なる観点からの合流こそが、シグナルの信頼性を高める。
2. サンプル数が統計的信頼性を決める
勝率90%のパターンがあっても、サンプル数が10件なら統計的に意味がない。最低50件(MEDIUM confidence)、できれば100件以上(HIGH confidence)のサンプル数がないと、パターンの実力を判断できない。
3. DBは定期的に更新する必要がある
市場環境は変化する。2022年に有効だったパターンが2026年にも有効とは限らない。ウォークフォワード最適化(直近N ヶ月のデータでDBを再構築する手法)の導入を将来計画している。
まとめ
Multi-Signal Confluenceの設計で重要なのは以下の3点だ。
- 異カテゴリ合流: トレンド × モメンタム × ボリューム等、独立した視点のシグナル合流
- 42パターンDB: 各パターンの勝率・RR比・サンプル数を過去データから定量化
- 後段フィルター設計: 既存のスコア判定を通過したシグナルに対してのみ適用。段階的な有効化
1つのテクニカル指標に依存するシステムから、複数の指標が「同時に同じ方向を指している」ことを確認するシステムへ。Confluenceはシグナルの「質」を測る仕組みだ。