投資の勉強を本格的に始めた初期のころに、「あぁ、なるほど」と腑に落ちた考え方があります。
それが 『破産リスク』 という考え方です。
多くの投資家がこの考え方を身につけないまま取引を続け、結果的に市場から退場してしまう大きな要因にも直結しています。
破産リスクとは?
破産リスクとは、現在の収益率などをもとに「どのくらいの負けで資金が尽きてしまうか」を計算し、そのリスクを 0%に抑えられる範囲で連続して負けても破産しないラインを決める という考え方です。
つまり、破産しない限り次のチャレンジができる という前提に立った資金管理の手法です。
腑に落ちた理由
多くの投資本では「心得」として、
- ルールを守ること
- 事前にルールを決めておくこと
- 一喜一憂しないこと
といったメンタル面の重要性が書かれています。
しかし、実際に「破産確率を数式で算出し、自分で許容できるボーダーラインを決める」考え方は、自分の性格に非常に合っており、納得感を持って実践できました。
破産リスクの計算式
一般に「バルサラの破産確率表」と呼ばれる表の元になる考え方で、勝率とリスクリワード比が決まっていれば、以下のシンプルな近似式で破産確率を見積もれます。
破産確率 ≒ ((1 - E) / (1 + E)) ^ U
- E = 期待値 = 勝率 × 平均利益率 − 敗率 × 平均損失率
- U = 口座資金を使い切るまでに許容できる連敗数(= 総許容損失 ÷ 1回あたり損失)
ポイントは「期待値 E がプラスでないと、U をいくら増やしても破産確率は1に収束する」という点です。逆に E がプラスなら、U を大きくするほど破産確率は指数的にゼロへ近づきます。
具体例 1: シンプルな勝率60%・RR比1:1のケース
- 口座資金 100万円、1トレードあたりの損失を 1%(1万円) に固定
- 最大許容ドローダウン 30%(30万円 → U = 30 回)
- 勝率 60%、損益率 1:1 → E = 0.6 × 1 − 0.4 × 1 = 0.2
破産確率 ≒ ((1 - 0.2) / (1 + 0.2)) ^ 30
= (0.6667) ^ 30
≒ 0.00052%(ほぼ 0)
許容損失を 1% に抑えるだけで、勝率 6 割の戦略なら事実上破産はしないことが分かります。
具体例 2: 勝率55%・RR比1:1のギリギリのケース
- 勝率 55%、損益率 1:1 → E = 0.55 − 0.45 = 0.10
- 同じく U = 30 回
破産確率 ≒ ((1 - 0.10) / (1 + 0.10)) ^ 30
= (0.8182) ^ 30
≒ 0.24%
勝率が 5 ポイント下がっただけで破産確率は 約 460 倍 に跳ね上がります。勝率の 1〜2 ポイントがどれほど重要かを実感できる例です。
Python で破産確率を計算する
実際のバックテスト結果からサッと破産確率を見るには、以下のような関数を用意しておくと便利です。
def risk_of_ruin(win_rate: float, rr_ratio: float, max_losses: int) -> float:
"""
win_rate : 勝率(0〜1)
rr_ratio : 1回あたりの平均利益 ÷ 平均損失
max_losses : 許容する連敗数(= 許容総損失 / 1回あたり損失)
"""
edge = win_rate * rr_ratio - (1 - win_rate)
if edge <= 0:
return 1.0 # 期待値ゼロ以下なら破産確率 100%
return ((1 - edge) / (1 + edge)) ** max_losses
# いくつかのシナリオで確認
scenarios = [
("勝率60% RR1:1 30連敗許容", 0.60, 1.0, 30),
("勝率55% RR1:1 30連敗許容", 0.55, 1.0, 30),
("勝率50% RR2:1 30連敗許容", 0.50, 2.0, 30),
("勝率40% RR2:1 30連敗許容", 0.40, 2.0, 30),
]
for label, wr, rr, u in scenarios:
p = risk_of_ruin(wr, rr, u)
print(f"{label}: {p * 100:.4f}%")
出力例:
勝率60% RR1:1 30連敗許容: 0.0005%
勝率55% RR1:1 30連敗許容: 0.2373%
勝率50% RR2:1 30連敗許容: 0.0182%
勝率40% RR2:1 30連敗許容: 1.7346%
勝率が低くても RR 比を大きくすれば破産確率を下げられる ことも、この計算から読み取れます。
1トレードのリスクをどう決めるか
破産確率が小さくなる条件は、ほぼ次の 3 つに集約されます。
- 1トレードあたりの損失額を口座資金の 1〜2% 以内に抑える
- 期待値がプラスの戦略を使う(= バックテストで検証する)
- 勝率と RR 比の「崩れ」に敏感になる
とくに 1 つ目の「1〜2% ルール」は、プロのトレーダーでも守っている考え方です。破産確率の式からも、U(許容連敗数)を 30 回以上確保できれば、多少勝率が揺らいでも破産までの距離が保てることが読み取れます。
これから始める方へ
これから投資を始める方も、まずは ご自身の元本と想定する勝率から破産確率を0にした場合の取引額 を計算し、それを上限に設定してからチャレンジされることをおすすめします。
破産リスクを意識することで、長く市場に残り続けることが可能になります。
参考: 2% ルールで計算する許容連敗数
「1トレードのリスクを資金の 2% にする」としたときの許容連敗数は次のようにシンプルに決まります。
| 許容ドローダウン | 許容連敗数 U |
|---|---|
| 10% | 5 回 |
| 20% | 10 回 |
| 30% | 15 回 |
| 40% | 20 回 |
| 50% | 25 回 |
この表と先ほどの risk_of_ruin 関数を組み合わせれば、「自分が耐えられるドローダウンの中で、どの勝率・RR比なら破産確率が実質ゼロに収まるか」を事前に見積もれます。システムトレードの戦略評価では必ず通る確認項目です。